3.扮装

 踊り手は、毛采をかぶり、仮面をつけ、平口袖、格子模様の身ごろに、紺の胸当をつけ、赤棒をかけ、腕には鎖惟子に手甲、広口袴をはき、後腰にはゴザの裏打による大口をつけ、その上に脱垂れをさげ、刀を帯びる。足には脚絆をまき白・足袋に切緒の草鞋。右手に扇を持ち、左手の中指にX字に赤い金剛杵(杖)をはさむ。 囃子方は紋服・はかま姿。
 仮面は威嚇的な異形の面で、一般には鬼面と呼ばれる。鬼面には阿吽があり、また4色あって、8人で踊る時は白面を1人がつけ、他は青面・赤面・黒面をつける。4色は陰陽五行説により四季や方位を表わすとともに、仏教の如来化身・ 五大明王を象徴している。
    白面−−秋・西・大威徳夜叉明王・(吽)
    青面−−春・東・降三世夜叉明王・(阿)
    赤面−−夏・南・軍茶利夜叉明王・(阿吽)
    黒面−−冬・北・金剛夜叉明王・(阿吽)
  したがって、鬼面は「鬼」ではなく、「仏」(明王)であると伝えられ、仏によって救われた姿なので、角がないとも称している。他にカッカタ面がある。
 毛采は、衣川剣舞や原体剣舞などの鳥采(鶏の尾羽根)とは違い、馬のたてがみにしっぽの毛を混ぜて作る。
 大口は「ゴザッパネ」とも言い、図柄には安倍貞任・正任兄弟を使い、染めている。かつては手がきで、明治初期の牛若丸の図柄、明治40年代の貞任・正任兄弟 の図柄の大口が残されている。
 踊り手の採り物は、扇・刀・金剛杵(杖)である。刀は脇差で、かつて真剣を用いたが、戦後まもなくの公演中に警察に没収されて以後は、踊り用の模擬刀を使うようになったと言う。金剛杵は古代インドの武器で、密教では煩悩を打破する菩提心の表象として用いた。修験者や巡礼者が持つ金剛杖はこの密教用具の独鈷杵(とっこしょ)を擬したもので、修業中の必携の道具である。これを赤い小棒で模し、左手の中指にはさんで踊る。

  戻る

トップページへ